政府、育成就労の方針決定 転籍制限、最長2年間に 永住資格取り消し要件検討 関連法案、3月国会提出へ

 政府の関係閣僚会議は9日、技能実習に代わり外国人材の確保・育成を目的とする新制度「育成就労」の方針を決定した。政府有識者会議の報告内容を大筋で踏襲したが、同じ業務分野で職場を変える「転籍」については最長で2年間制限するなど自民党提言を一部考慮した。
 事実上永住も可能な「特定技能」への移行を促す新制度導入で「永住者」の在留資格を得た外国人の増加が見込まれ、資格を取り消す場合の要件も検討。技能実習適正化法や入管難民法の改正案を3月にも国会に提出する。
 岸田文雄首相は方針決定に関し「わが国が外国人材から選ばれる国になるという観点に立ち、方針に基づき作業を進めていく」と述べ、受け入れ環境の整備に取り組むよう各大臣に指示した。
 技能実習では原則転籍が認められず、劣悪な環境から逃れようと失踪者が続出。このため、受け入れ制度を見直す政府有識者会議が昨年11月、原則1年超の就労で転籍を認め、必要な経過措置を検討するとの最終報告をまとめた。しかし、地方から条件の良い都市部へ人材が流出するとの懸念が広がり、自民党の部会が2年まで転籍制限を可能とするよう法相に提言。政府はこれらを踏まえ、分野ごとに就労開始1年~2年の範囲で転籍を制限できるとした。
 転籍時の日本語能力は、各分野で最も易しい日本語能力試験「N5」レベルや、基本的な日本語を理解することができる「N4」レベルを設定。受け入れの仲介を担う監理団体は「監理支援機関」に名称を変え、外部監査人の設置を義務付ける。
 育成就労は、2019年に始まった特定技能制度へ移行を進め、外国人労働者に中長期の就労を促す。熟練技能を要し、配偶者と子どもの帯同が認められる特定技能「2号」は、在留期間の更新に上限がなく、事実上永住も可能。
 政府は永住資格を得た外国人が今後増えることを想定し、税金や社会保険料を納付しない場合は資格を取り消せるようにするなど要件を整備する。小泉龍司法相は閣議後記者会見で「不適切な永住者を放置すると、社会全体が受け入れなくなる。(要件見直しは)中長期的には、より多くの永住者を受け入れることにつながる」と強調した。
(共同通信社)