中小賃上げへ企業減税強化 期限延長、赤字でも優遇

 政権が「最重要課題の一つ」(岸田文雄首相)と位置付ける賃上げに向けては、企業向けの法人税減税の強化を検討する。2023年度末が期限となっている賃上げ税制の延長や、中小企業の賃金引き上げを促すために赤字の場合でも優遇措置の恩恵が及ぶようにすることが柱。ただ政府の旗振りにもかかわらず、賃上げはいまだに物価上昇のペースに追い付いておらず、成果を上げられるかどうかは不透明だ。
 現行の賃上げ税制では、中小企業などが賃上げを実施した決算期が赤字だったり繰越欠損金があったりして法人税を払っていない場合は、減税措置の恩恵が及ばない。このため将来の黒字を見込んで一定期間、減税する権利を繰り越せるようにする方向だ。景気の影響を受けやすい中小企業が、業績が厳しい状況でも賃上げをしやすい環境を整える狙いがある。
 岸田首相は経済対策などを通じて「物価上昇プラス数%」の継続的な賃上げを目指す姿勢も掲げている。ただ厚生労働省が6日に発表した8月の毎月勤労統計調査では、実質賃金は17カ月連続のマイナスだった。政権が音頭を取った今春闘の結果を踏まえても、賃金は物価に追い付いておらず、かけ声との隔たりが大きい。
(共同通信社)