「年収の壁」解消策を議論 厚労省、保険料軽減案例示 公平性課題、24年末まとめ

 厚生労働省は21日、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の部会を開き、配偶者に扶養されるパート従業員らが社会保険料負担を避けるために働く時間を抑える「年収の壁」の解消策を議論した。厚労省は保険料を軽減するといった案を例示。委員からは保険料を払う単身者や自営業者との公平性が課題だと異論が相次いだ。2024年末までに方針を取りまとめる。
 部会では、厚労省がパート従業員らに新たに生じる保険料について(1)一律免除(2)複数年かけて負担割合を引き上げる(3)収入の増加に伴って段階的に負担を引き上げる-などの案を提示した。
 委員からは保険料を負担している人と比較したときに「あまりにも不公平」、「収入があって負担能力があるのに軽減すれば保険の原理原則に反する」など疑問視する意見が大半を占めた。
 会社員や公務員に扶養されるパート従業員らは「第3号被保険者」と呼ばれ、収入が一定額を下回る場合は保険料負担がない。年収が一定額を上回ると扶養から外れ、新たに厚生年金などの保険料を払う必要がある。手取りが減るため、就労時間を抑える要因になっている。厚労省の推計では年収の壁によって就業調整をしている可能性がある人は約60万人に上る。
 年収の壁対策を巡っては、政府は当面の措置として、従業員の手取り減少分を穴埋めした企業を支援する制度を10月から始める方針。部会では、その後の抜本的な制度見直しを検討している。
(共同通信社)