大工として働いた相模原市の松田光雄さんが2015年、肺がんのため55歳で死亡したのは建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込んだためだとして、妻の加津恵さん(63)が労災を認めなかった国の処分取り消しを求めた訴訟の判決で、横浜地裁は19日、請求を棄却した。
岡田伸太裁判長は、仕事で一定の石綿にさらされたと言えるが、がんの原因は長年の喫煙である可能性が否定できないと指摘。「仕事が原因でがんになったと認めることはできない」と結論付けた。
加津恵さん側は訴訟で、石綿を吸った場合の病変「胸膜プラーク」が確認されたと主張。しかし判決は、松田さんを診察した医師が、胸膜プラークはないと診断していたなどとし、退けた。
判決によると、松田さんは1981年から、工務店の従業員や一人親方として、石綿を含む建材を削る作業などに従事。14年に肺がんと診断され、相模原労働基準監督署に休業補償を請求後の15年、死去した。労基署は16年、補償を認めなかった。
原告代理人の飯田学史弁護士は東京都内で記者会見し、判決で胸膜プラークを否定した理由がきちんと説明されておらず「雑な認定でびっくりした」と批判。喫煙歴を過度に重視しているとも指摘し、控訴すると明らかにした。
(共同通信社)
2023年07月19日 共同通信社