精神障害の労災、過去最多 4年連続、パワハラ目立つ 22年度の厚労省まとめ

 厚生労働省は30日、仕事が原因でうつ病などの精神障害を発症し、2022年度に労災認定を受けたのは710件だったと発表した。前年度より81件多く、統計を始めた1983年度以降の過去最多を4年連続で更新。このうち自殺は62件で前年度より12件減り、自殺未遂は前年度と変わらず5件だった。原因別ではパワハラが147件と最多で、改善が進まない職場の実態が改めて浮き彫りになった。
 精神障害の労災請求は前年度比337件増の2683件で過去最多。認定率は35・8%だった。厚労省の担当者は「精神障害も労災となることが知られてきた結果ではないか」と話している。
 原因別では、パワハラに次いで「悲惨な事故や災害の体験、目撃」の89件、「仕事内容や仕事量の変化を生じさせる出来事があった」の78件が多かった。「同僚などによる暴行、いじめ、嫌がらせ」や「セクハラ」も目立った。
 業種別では、社会保険・社会福祉・介護が85件で最も多く、医療79件、道路貨物運送37件と続いた。
 過重労働による脳・心臓疾患で労災認定されたのは、前年度から22件増えて194件となり、うち死亡(過労死)は前年度より3人少ない54人だった。業種別では道路貨物運送の50件が最多だった。
 認定されたケースの時間外労働は、発症前2~6カ月間の月平均で「60時間以上80時間未満」が最も多かった。労災認定では月80時間の「過労死ライン」が重視されるが、厚労省は21年9月に基準を見直し、不規則勤務など労働時間以外の負荷も考慮することを明確化した。担当者は「新基準で認定の幅が広がった」と分析している。
(共同通信社)