建設現場でアスベスト(石綿)を吸い、肺がんや中皮腫を患った神奈川県の元労働者や遺族ら計28人が、建材メーカー6社に計6億9300万円の損害賠償を求めた訴訟の差し戻し審判決で、東京高裁は31日、うち4社に22人に対する計約1億367万円の支払いを命じた。
渡部勇次裁判長は、石綿と健康被害の因果関係に関する医学的知見が確立されたことなどから、遅くとも1975年以降、石綿の危険性を製品に表示するなどの義務があったと判断。建材の市場シェアなどから、賠償責任を認定した。
4社はエーアンドエーマテリアル(横浜市)、ニチアス(東京)、エム・エム・ケイ(同)、太平洋セメント(同)。
東京都内で記者会見した原告側代理人は「(メーカー側は)裁判による時間稼ぎはやめるべきだ」と語り、一部原告の請求が認められなかった点は「大変残念で遺憾」と述べた。原告の古野正行さん(78)は「こんなに長くかかるとは思わなかった。私は勝訴したが、途中でたくさんの人が亡くなってしまった」と話した。
最高裁は2021年5月、元労働者らが国と建材メーカーに損害賠償を求めた神奈川訴訟など4件の集団訴訟の上告審判決で、国の責任を認める一方、建材メーカーについては個別に審理する必要があるとした上で、一部の責任を認めた。
神奈川訴訟の一部は東京高裁に差し戻され、国との間では和解が成立したが、メーカー6社とは責任の範囲が争点となった。うち1社のノザワ(神戸市中央区)とは今年5月、原告4人との間で和解が成立した。
(共同通信社)