コロナ在宅勤務認めず違法 元教諭提訴、市に賠償命令

 2020年3月にスイスから帰国し新型コロナウイルス対策のため在宅勤務をしたのに欠勤とされて給与を減らされたのは不当として、大阪市立中の元教諭松田幹雄さん(67)が市に約114万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が17日、大阪地裁であった。横田昌紀裁判長は、在宅勤務を認めなかった校長の判断を違法と指摘し慰謝料など約9万円の賠償を命じた。

 判決によると、松田さんは労働組合の活動でスイスに渡航し20年3月17日に帰国。政府の専門家会議が欧州からの帰国者に対し2週間の自宅待機を要請していたのを受け、校長の提案もあり同19日から在宅で働いた。だが校長は、在宅勤務を認めないとする約10年前の市教育委員会の通達を根拠に同24日になって出勤を命令した。松田さんは応じず在宅勤務を続けたが、同19日以降の8日間分の勤務日を欠勤とされ給与が減額された。

 判決は、当時はコロナに関する知見が乏しく、感染対策を模索していた情勢だったのに考慮せず、通達を形式的に適用した校長の判断は「社会通念上の妥当性を欠き、裁量権の乱用」とし、慰謝料は5万円が相当とした。同19、23、24日の3日間、松田さんが職場に出勤しなかったのは校長の提案など学校側の責任として3日間分の給与約4万円の支払いを命じた。

 松田さんは出勤命令に関し、感染防止に向けた安全配慮義務に違反すると主張。判決は学校側が隔離措置を提案していたことなどから一定の配慮があったとして退けた。

(共同通信社)