中電社員自殺、労災認める 名古屋高裁で逆転勝訴

 2010年に中部電力の三重支店に勤務していた鈴木陽介さん=当時(26)=が自殺したのは、上司の暴言などパワーハラスメントや過重業務が原因として、母親吉田典子さん(61)が、労災を認めなかった津労働基準監督署の処分取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁は25日、請求を棄却した一審判決を取り消し、津労基署の処分を取り消した。

 一審名古屋地裁判決は、吉田さん側が主張する「こんなんで大卒か」「おまえなんていらない」などの暴言を裏付ける証拠はないと述べた。だが、高裁の長谷川恭弘裁判長は判決理由で、鈴木さんの友人の証言から暴言はあったと認定。「業務指導の範囲を逸脱し、人格や人間性を否定するものだ」と判断した。

 さらに、難易度の高い業務の進め方が分からなかった新入社員の鈴木さんに対し、上司は十分な説明や指導をしなかったと指摘。心理的負荷が全体として強かったのは明らかで、精神障害の発病と自殺は業務に起因すると結論付けた。

 名古屋市で記者会見した吉田さんは「いろいろな人の力を借りて、陽介の仕事がどんなに大変だったか証明された。本当に良かった」と話した。

 津労基署の杉徳敬副署長は「判決内容を検討し、関係機関と協議した上で判断したい」とコメント。中部電は「判決が出ていることは承知しているが、訴訟の当事者ではないのでコメントは差し控える」とした。

 判決によると、鈴木さんは10年4月に入社。三重支店に配属され、精神障害を発病し同10月に自殺した。吉田さんが労災申請したが、津労基署は14年、認定しなかった。

(共同通信社)