2023年03月15日  共同通信社

電機、自動車は満額回答 物価高、人材獲得競争で 中小、地方の底上げ課題 首相、最低賃金千円意欲

 2023年春闘は15日、大手企業の集中回答日を迎え、基本給を底上げするベースアップ(ベア)などの労働組合の要求に対し、製造業の電機7社と自動車8社の全てが満額回答となった。歴史的な物価高や人材獲得競争の激化を受け、今年は集中回答日を待たずに高水準の回答をする企業も多く、経営側の積極姿勢が鮮明となった。ただ、物価上昇の影響を差し引いた実質賃金は10カ月連続で減少が続く。中小や地方の企業を含む幅広い賃金の底上げと持続性が今後の課題となる。

 政府は15日、賃上げに向けて労働団体や経済界の代表らと協議する「政労使会議」を開いた。岸田文雄首相は、これから交渉が本格化する中小企業や小規模事業者への賃上げ波及に向けて「政策を総動員して環境整備に取り組む」と述べた。首相は最低賃金の全国加重平均を22年の時給961円から23年に千円へ引き上げることに意欲を示し、千円達成後の引き上げについても今夏以降議論する意向を明らかにした。

 政労使会議の開催は15年4月以来、約8年ぶりで、連合の芳野友子会長や経団連の十倉雅和会長らが出席した。

 日産自動車は労働組合が要求した月額平均1万2千円の賃上げに満額で答えた。現行の人事制度となった04年度以降では最高で、年間一時金(ボーナス)も5・5カ月分の要求に満額回答した。

 日立製作所と三菱電機など電機大手はベア月額7千円の満額回答。日立の回答額はベアを明示する要求となった1998年以降の最大で、三菱電機は記録が残る74年以降で初めての満額回答となった。

 パナソニックホールディングスと富士通もベア7千円で満額回答し、東芝とNECは福利厚生に使えるポイントを含め計7千円とした。

 自動車や電機などの産業別労働組合(産別)でつくる金属労協や、中小製造業も加盟する産業別労働組合「JAM」の職員が回答状況をボードに書き込んだ。

 集中回答日を待たず早々に賃上げを表明した企業では、トヨタ自動車とホンダが2月に、賃上げや年間一時金の要求に満額回答。トヨタは1人平均の賃上げ額が過去20年で最高水準となり、ホンダはベア月額平均1万2500円で90年以降、最高額となった。

(共同通信社)