熊本県畜産研究所(合志市)で豚舎管理などの業務に当たっていた際に家畜由来の病原菌に感染し、2015年に死亡した男性職員=当時(57)=の遺族が、公務災害と認めなかった地方公務員災害補償基金の処分取り消しを求めた訴訟の判決で、熊本地裁は27日、原告の請求を認め処分を取り消した。
品川英基裁判長は判決理由で、業務は「豚由来の菌に感染して病気を発症する危険性を有する」と認定。感染との間に「相当因果関係を肯定できる」と判断した。別の病気による免疫力低下が感染原因だとした基金側主張は、免疫正常者でも畜産関係者の感染例があるとして退けた。
判決によると、松本小市郎さんは13年4月に研究所に配属後、骨髄増殖性腫瘍などで断続的に入院や休職をし、14年2月に復職した。豚の運搬や餌やりなどの作業をしていたが、15年1月までに豚由来の病原菌に感染した。同4月、公務災害を申請。翌5月に敗血症で死亡した。
遺族が手続きを承継。基金は16年3月、業務との因果関係を否定し、公務災害と認めなかった。
原告で妹の津田ひとみさん(63)は熊本市での記者会見で判決を評価しつつ「もっと早く解決できたのではないか。安心して働いて、何かあった時に補償するのが基金のはずだ」と涙をにじませた。
基金は取材に「判決内容を精査し、関係者と協議する」と答えた。
(共同通信社)