兵庫県西宮市で2018年夏、炎天下で建築作業をしていた枡之内秀行さん=当時(44)=がくも膜下出血を発症して死亡したのに、残業時間が「過労死ライン」に満たないとして労災と認めなかった伊丹労働基準監督署(同県伊丹市)の処分は不当として、妻(48)が11日、国に処分の取り消しを求め、大阪地裁に提訴した。
厚生労働省は21年9月、労災認定の基準を改定。残業時間が過労死ラインに達していなくても、過酷な作業環境などを負荷要因として評価することを明確化した。基準改定を踏まえ妻側は、30度近くの気温で作業に1カ月以上従事したとして、労災と認めるべきだと主張し、残業時間の算定も実態に見合っていないと指摘している。
伊丹労基署は「個別の事案につき、答えられない」としている。
訴状などによると枡之内さんは18年8月、家屋の建築現場で作業中にくも膜下出血を発症。意識が回復せず同9月に死亡した。伊丹労基署は19年6月、発症前2カ月の残業時間は月平均62時間と算定し、過労死ラインの月平均80時間に満たないとして労災申請を退けた。
妻側による再審査の申し立てを受け労働保険審査会は22年9月、残業時間を月平均73時間とする一方、炎天下の労働環境の負荷は考慮せず再び退けた。
(共同通信社)