労災が起きると事業所が負担する労災保険料が引き上げられる制度を巡り、厚生労働省の有識者検討会は7日、事業主の権利として不服申し立てできる仕組みに見直す方針を了承した。不服審査で労災認定が不相当と判断されれば保険料は増額されない。被災者側への保険給付が覆ることはないが、事業主の責任否定を助長し、賠償請求訴訟などに影響するとの懸念の声もある。
労災保険は、労働基準監督署が病気やけがを業務起因と認めれば、治療費などを支給する制度。従業員が労災認定された事業所では翌々年度から3年間、保険料の負担額が引き上げられる。
厚労省によると、近年は作業事故などに比べて分かりにくい精神疾患の労災認定が増え、事業主が不満を訴えるケースが多発。認定の取り消し請求権を認めた訴訟の判例もあり、検討会で対応を議論していた。
労災認定が不相当と裏付ける新証拠が見つかるなどして不服が妥当とされた場合、保険料の引き上げを取り消す。被災者の不利益にならないよう労災認定自体が取り消されることはない。
被災者を支援する弁護士らは、不服審査に時間がかかり損害賠償を求める訴訟の進行が遅れるといった影響を懸念。厚労省は労使の代表者でつくる審議会で意見聴取した後、通達を出して運用を始めるとしている。
(共同通信社)