2016年の共著『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(東洋経済新報社)で人生100年時代の生き方を問うた著者が、単著である本書では、コロナ禍で普及したテレワークは働き手の自由度を高める一方で、人的交流を減らしイノベーションを停滞させる可能性もあるとした上で、社員の幸福と企業の競争力向上を両立するには、仕事の在り方を根本から設計し直す(リデザインする)必要があると説いています。
第1章では、仕事をリデザインするためのプロセスには、①理解する、②新たに構想する、③モデルをつくり検証する、④行動して創造する、の4段階があるとして、以下の各章でそれぞれ解説しています。
第2章「理解する」では、自社における生産性を支える行動と能力は何か、知識の流れと人的ネットワークの仕組みはどうなっているか、社員が仕事と会社に期待することは何か、現場で何が起きているか、を理解する必要があるとしています。
第3章「新たに構想する」では、「働く場所」と「働く時間」について新たに構想するべきとしています。場所については、オフィスは「協力」の場となるように、自宅は「活力」の基になるようにするべきであり、時間については、課題に「集中」する時間を設ける一方で、より良い「連携」(バーチャルな連携も含め)のための時間の設け方も検討するべきであるとしています。
第4章「モデルをつくり検証する」では、自社の仕事の在り方を設計し直し、社員がいつ、どこで、どのように働くかというモデルをつくった際には、その新しいデザインは未来にも通用するか、テクノロジーの変化に即しているか、公平で正義にかなうものか、の3点について検証せよとしています。
第5章「行動して創造する」では、優れたマネジャーの果たす役割を考察した上で、リーダー層が大きな視点と戦略を示し、それを軸に全社の知見やエネルギーを組み合わせる「コ・クリエーション」のプロセスを試してみることを推奨し、さらに、リーダーがストーリーを描くことで人を動かす「語り力」の重要性を説いています。そして、ある企業において、戦略上の「パーパス」の強化に向けて、これまで述べてきた四つのステップを実践した例を紹介しています。
長引くコロナ禍の影響で、人々の働き方や働くということへの意識に変化が見られるのは間違いなく、企業も今「新しい働き方」を模索しているところではないかと思います。本書の場合、これを仕事の在り方を設計し直す絶好のチャンスと捉えている点が特徴的です。
また、働き方の再設計の前提として、働く人を大切にする職場にこそ人は集まり、人間的な豊かさが成果につながるという考えに立ち、その上で、仕事というものを再設計する際の手順を示した本であるといえます。
かなりコンセプチュアルな説明となっている部分も多いですが、一方で、企業事例も多く紹介されています。また、第2章から第5章までの4章は、各章4節、全16節から成り、それぞれの節の末尾に「新しい働き方のアクション」がまとめられています。そのため、啓発書でありながら、同時に実践の書ともいえるものになっています。
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※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』(有料版)で2022年11月にご紹介したものです
和田泰明 わだ やすあき
和田人事企画事務所 人事・賃金コンサルタント、社会保険労務士
1981年 中堅広告代理店に入社(早稲田大学第一文学部卒)
1987年 同社人事部へ配転
1995年 同社人事部長
1999年 社会保険労務士試験合格、2000年 行政書士試験合格
2001年 広告代理店を退職、同社顧問(独立人事コンサルタントに)
2002年 日本マンパワー認定人事コンサルタント
2003年 社会保険労務士開業登録(13030300号)「和田人事企画事務所」
2004年 NPO生涯教育認定キャリア・コンサルタント
2006年 特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)合格
1994-1995年 日経連職務分析センター(現日本経団連人事賃金センター)「年俸制研究部会」委員
2006年- 中央職業能力開発協会「ビジネス・キャリア検定試験問題[人事・人材開発部門]」策定委員
2009年 早稲田大学オープン教育センター「企業法務概論」ゲストスピーカー
