「ビジネス・キャリア検定試験」は、事務系職種のビジネスパーソンを対象に平成6年(1994年)にスタートした、中央職業能力開発協会(JAVADA)が実施する公的資格試験です。事務系職業の労働者に求められる能力の高度化に対処するために、段階的・計画的に自らの職業能力の習得を支援し、キャリアアップのための職業能力の客観的な証明を行うことを目的としています。
分かりやすく言えば、同じくJAVADAが実施する「技能検定」のホワイトカラー版といったところでしょうか。検定分野は「人事・人材開発・労務管理」「企業法務・総務」など8分野に区分され、その中に「人事・人材開発」「労務管理」「企業法務」「総務」など19部門(2級)があり、2級と3級の試験がそれぞれ年2回実施されています(このほかに、論述式の1級の試験が年1回実施されている)。出題数は40問で、おおむね60%以上の正答が合否基準となっています。
本書は「人事・人材開発」部門の2級(部長補佐・課長級)・3級(課長補佐・係長級)の過去問題集です。一部、労働法関連の問題も含まれていますが、当然のことながら、労働法分野も「人事」の出題範囲内です。出題される具体的な領域・項目はJAVADAのホームページで公開されていますので、現在は受験する予定がなくても、担当業務がその領域に含まれる場合は知識習得に役立つものと思います。
「人事・人材開発」部門の出題傾向としては、2級・3級とも新規問題よりも過去問題をそのままないしは一部改変して出題するケースが、出題数に占めるウエートとしては圧倒的に高いため、この過去問題集を読み込めば、試験において40問のうち何問かは、読まない人より上乗せできると思います。
JAVADAは以前から過去問をWebサイトで公表し、新たに実施された試験も同じように試験後それほど日を置かずに公表していますが、正答の公表のみで解説がなかったため、これだけでは今一つ、過去問を検証する動機づけが弱かったように思います。この解説付き過去問題集を読むと(一度自分で解いてみるのが理想だが)、どうしてそのような答えになるのか納得することができ、作問者の意図を嗅ぎ取るセンスのようなものが身に付くのではないかと思います。
その上で、(本書にすべての過去問が出ているわけではないため)その他の過去問をWebサイトでチェックすれば、試験対策効果としては大きいと思います。もちろん、2級・3級についてはそれぞれ公式テキストがあるので、学習効果全体を向上させるためにはテキストの読み込みも欠かせないと思います。ただし、ほとんどの公的資格試験に当てはまることですが、より確実に合格ラインを確保しようとするならば、過去問をやらない手はないと思われます。
本書は第2版ですが、初版を既に所持している人にもお薦めです。なぜならば、この第2版では、すべての過去問が初版で取り上げた過去問と重複しない形で抽出されているからです。したがって、初版に加えてこの第2版も読み込めば、過去問対策としてはより盤石になるでしょう。
このように、活用すればしただけ試験で有利になるかと思いますが、ただ試験に合格するためというだけでなく、自らの人事的な知識・センスをチェックし、それをより一層磨きたいと思っている人にもお薦めです。
<本書籍の書評マップ&評価> 下の画像をクリックすると拡大表示になります
※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』(有料版)で2022年11月にご紹介したものです
和田泰明 わだ やすあき
和田人事企画事務所 人事・賃金コンサルタント、社会保険労務士
1981年 中堅広告代理店に入社(早稲田大学第一文学部卒)
1987年 同社人事部へ配転
1995年 同社人事部長
1999年 社会保険労務士試験合格、2000年 行政書士試験合格
2001年 広告代理店を退職、同社顧問(独立人事コンサルタントに)
2002年 日本マンパワー認定人事コンサルタント
2003年 社会保険労務士開業登録(13030300号)「和田人事企画事務所」
2004年 NPO生涯教育認定キャリア・コンサルタント
2006年 特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)合格
1994-1995年 日経連職務分析センター(現日本経団連人事賃金センター)「年俸制研究部会」委員
2006年- 中央職業能力開発協会「ビジネス・キャリア検定試験問題[人事・人材開発部門]」策定委員
2009年 早稲田大学オープン教育センター「企業法務概論」ゲストスピーカー