2015年、業務後に急死した家事代行兼介護ヘルパーの女性=当時(68)=を巡り、労働基準法が適用されない「家事使用人」との理由で労災と認めなかった渋谷労働基準監督署の処分は不当として、夫(75)が国に取り消しを求めた訴訟の判決で、東京地裁は29日、請求を棄却した。
家事使用人は、個人の家庭から指示を受けて家事をする者とされ、労基法上は労働者とみなされない。厚生労働省は、家事を請け負う事業者に雇われる場合、労働者として扱うとしている。
片野正樹裁判長は判決理由で、女性は介護ヘルパーとして東京都の訪問介護・家事代行サービス会社に雇われ、利用者の家庭に約1週間泊まり込みで派遣されたが、家事に関しては、会社から紹介、あっせんされる立場だったと指摘。家事の雇用契約はこの家庭と結んでおり、家事使用人に該当するとした。
その上で、労働者とみなされる介護ヘルパーの仕事は1日4時間半にとどまり「過重業務とは認められない」と述べた。
原告側は、家事と介護は会社の指示による一体の業務でいずれも労働者と扱うのが相当と主張。そもそも、家事使用人を労基法の適用外とするのは憲法違反だと訴えていた。夫は判決後に記者会見し、控訴の意向を表明。「法律を改正し、家事従事者への保護、補償をすべきだ」と話した。
判決などによると、女性は15年5月、日常生活に介助を要する「要介護5」の利用者宅での勤務を終えた日の夜、入浴施設で急性心筋梗塞を発症して死亡した。
夫は労災申請したが認められず、2度の再審査も退けられた。
(共同通信社)