地域の人事部

公開日 2022.8.25 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)

地域の人事部(ちいきのじんじぶ)

 人材確保・育成に課題を抱えながらも、専任の人事・採用担当者がいない中小企業が多い現状を踏まえ、地方自治体、商工会議所や金融機関などの支援機関などが一丸となって、その地域の人事部としての機能を担い、中小企業の多様な人材活用を推進していこうとする構想。2022年から経済産業省関東経済産業局を中心に構想実現に向けた取り組みが進められている。
 「地域の人事部」に期待される役割として、次の6点が挙げられる。

(1)自治体、商工会・商工会議所、金融機関、地域中小企業などの関係機関がそれぞれの強みを活かして、中長期的な視点で、地域ぐるみで取り組むこと

(2)地域が目指す将来像に沿った人材戦略を策定ないし具現化する機能を有し、同戦略について関係機関同士で認識を共有したり、具現化に向けた実行を行うこと

(3)地域の人材戦略に基づき多様な人材活用に係る経営者の意識変革の促進や、実行の後押しを行うこと

(4)地域トータルでの魅力を再発見したり、発信する機能を有し、地域中小企業単独では成し得ないような人材確保支援に取り組むこと

(5)地域の人材戦略を踏まえた人材の育成と定着支援に地域全体で取り組むこと

(6)地域中小企業の生産性向上等による経済的価値の提供と、個性と魅力あふれる多極分散型社会の実現といった社会的価値の創出を目指すこと

 これまでも、一部の地域において、地方自治体や商工会議所などによって地域中小企業の人材活用を積極的に支援する取り組みが行われ、そこでは「支援機関間の連携が不十分」「支援機関が民間団体の場合、支援先から正当な対価を得て収益が確保できる仕組みが必要」などの課題が浮き彫りになった。「地域の人事部」構想の実現に当たっては、これらの課題への取り組みが必要と考えられる。
 今後、「地域の人事部」構想に基づく取り組みは、各地域でモデルケースとして実施され、そこで新たな課題抽出、効果検証等を行いながら他地域に展開していくことが予定されている。