古川禎久法相は29日の閣議後記者会見で、外国人技能実習制度の本格的な見直しに乗り出す考えを表明した。実習先で暴行を受けるなど人権侵害が後を絶たないといった問題点を挙げ「制度の趣旨と運用実態が乖離せず、整合する」ことが必要だと強調した。政府は年内にも有識者会議を設け、具体的な制度改正に向けた議論を進める方針。
古川氏は今年2月から勉強会を開き、専門家や外国人支援団体の代表ら10人超から意見聴取。「人づくりによる国際貢献という制度の目的と、人手不足を補う労働力として扱うという実態が乖離している」と指摘されたという。会見で「実習生がキャリアパスを描きづらく、構造的に人権侵害が生じやすい制度だ。長年の課題を歴史的決着に導きたい」と述べた。
勉強会では(1)実習先と実習生双方に事前の情報が不足し、賃金やスキルにミスマッチが生じている(2)高額の借金を背負ったり、原則転籍できないとされたりしているため、不当な扱いを受けても相談できない実習生がいる-といった問題点が挙げられた。このほか、受け入れを仲介する監理団体や、外国人技能実習機構の支援体制の不十分さに対する言及もあった。
古川氏は課題を踏まえ、人権侵害が起きないような体制整備や、実習生と日本側の双方がプラスになる仕組みにすることをポイントとした。政府の有識者会議では、この考え方に基づいて議論される見通し。
古川氏はまた、外国人の就労拡大のための在留資格「特定技能」に関し、新型コロナウイルスの感染状況などを踏まえ、受け入れ見込み数を柔軟に設定すべきだとした。
特定技能は2019年の改正入管難民法施行から2年、技能実習は17年の技能実習適正化法施行から5年をめどに運用状況を検討し、必要に応じ制度を見直すとされている。
(共同通信社)