公開日 2022.07.27 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)
公益通報対応業務従事者(こうえきつうほうたいおうぎょうむじゅうじしゃ)
公益通報(事業者による一定の違法行為等を、労働者等が組織内の通報窓口や外部のしかるべき機関に通報すること)を受け、通報対象事実の調査を行い、その是正に必要な措置をとる業務に従事する者で、かつ当該業務に関して公益通報者を特定させる事項を伝達される者(公益通報者保護法11条1項)。常時使用する労働者が300人を超える事業者は、公益通報対応業務従事者(以下、従事者)を指定することが義務づけられている(300人以下の事業者は努力義務とされている)。
従事者は、公益通報対応業務を行うことを主たる職務とする部門(コンプライアンス部、総務部など)の担当者が指定されるものと想定されるが、それ以外の部門の担当者であっても、必要が生じた都度、従事者として指定しなければならない。内部公益通報受付窓口を外部の弁護士等に委託し、当該弁護士等が公益通報対応業務に関して、公益通報者を特定させる事項を伝達される場合には、従事者として定める必要がある。
内部公益通報を受け付けた従事者は、必要な調査を実施することになるが、その際、次の事項に留意するべきである。
(1)公益通報者を特定させる事項、内部公益通報に関する秘密や個人情報についての情報管理を徹底する
(2)公益通報者が特定されないような方法で調査を行う
(3)公益通報者と接触するに当たって時間や場所を適切に定める
(4)自らが刑事罰で担保された守秘義務を負う立場にあること、従事者であった期間に知り得た事項に係る守秘義務については期限の定めなく課されることを常に意識する
なお、従事者または従事者であった者は、正当な理由がなく、その公益通報対応業務に関して知り得た事項であって公益通報者を特定させるものを漏らしてはならないものと定められており(公益通報者保護法12条)、これに違反した場合は刑事罰(30万円以下の罰金)の対象となる(同法21条)。