労働契約解消金

公開日 2022.05.25 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)

労働契約解消金(ろうどうけいやくかいしょうきん)

 厚生労働省が設置した専門家検討会で議論が進められている「解雇無効時の金銭救済制度」において、無効な解雇がなされた場合に、その労働契約を終了させるために、労働者の請求によって使用者が支払う金銭とされるもの。
 厚生労働省「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」では、2018年6月から、法技術的に取り得る制度の枠組み、労働契約解消金の内容や考慮要素などについて議論を重ね、2022年4月12日にその結果を報告書として公表した。
 労働基準法20条に基づく解雇予告手当は、解雇が有効に行われる場合に使用者が解雇する労働者に対して支払うものであるのに対して、同検討会の議論による金銭解決制度は、「無効な解雇がなされた場合に、労働者の請求によって使用者が一定の金銭(労働契約解消金)を支払い、当該支払いによって労働契約が終了する」仕組みが想定されている。

 検討会報告書では、労働契約解消金の位置づけについて[図表]のとおり、「無効な解雇がなされた労働者の地位を解消する対価(A案①・②)」と「無効な解雇により生じた労働者の地位をめぐる紛争について労働契約の終了により解決する対価(B案)」の二通りで整理し、それぞれによる算定方法・考慮要素を示している。定型的な要素による金額算定で早期解決の可能性が高まるA案に対し、解雇の不当性を加味するB案は個別事情が考慮・反映される一方、紛争長期化を招く懸念も指摘されている。

[図表]労働契約解消金の内容・考慮要素等の整理

資料出所:厚生労働省「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会報告書」(2022年4月)

 今後、労働政策審議会において、解雇無効時の金銭解決制度の導入の是非が議論されるときに、この報告書の内容を踏まえて、労働契約解消金の定義や算定方法なども検討される見込みである。