2022年04月19日  共同通信社

1分遅延賃金56円支給命令 JR西と運転士の訴訟

 JR西日本岡山支社の50代男性運転士(病死)が回送列車の出発を1分間遅延させるミスをしたことを理由に、1分間分の賃金など56円が支給されなかったのは不当として、JR西に未払い分や慰謝料など計約220万円を求めた訴訟の判決で、岡山地裁は19日、56円の支払いを命じた。慰謝料の請求は棄却した。
 奥野寿則裁判長は、JR西が乗務員らに指示していた業務の内容に反する誤りや遅延があった場合、正規の業務内容へ修正するための行動も「業務の遂行に向けた一連の労務」に当たると判断。男性は自らミスに気付き、直ちに所定の業務内容に修正するべく行動したとして1分間の遅延も労務に当たり、賃金支払いの対象になるとした。
 男性が受けた不利益は少額で、賃金が支給されれば回復されるとして慰謝料は認めなかった。
 JR西はミスが運行の遅延などにつながった場合、その分を欠勤扱いとし、処分の対象にしてきた運用を3月に見直した。運用の見直しに今回の訴訟は影響していないとしている。JR西は「判決内容を真摯に受け止める」と控訴しない方針。
 判決によると、男性は2020年6月、JR岡山駅で回送列車を車庫に入れる業務を指示された際、列車を待つホームを勘違い。当直係長に電話をするなどして直ちに正しいホームに駆け付けたが、乗り継ぎの開始が約2分遅れ列車のホーム出発は約1分遅れた。
 JR西は当初、乗り継ぎが遅れた約2分間分の賃金85円を不支給としたが岡山労働基準監督署の是正勧告を受け、出発が遅れた約1分間分を不支給とした。
 男性は昨年3月に提訴。JR側は未払い分と遅延損害金のみを支払う内容で和解を提案したが成立しなかった。男性は今年に入って病死した。
(共同通信社)