労働者が不当解雇された場合、職場復帰ではなく企業が金銭を支払うことで解決する制度を巡り、厚生労働省の有識者検討会が11日開かれた。法的論点を整理した報告書をまとめ、今後、労使代表がメンバーの労働政策審議会で導入の是非を本格的に議論する見通しだ。報告書では訴訟や労働審判で解雇無効が確定した労働者が希望すれば、企業から金銭を受け取ることで労働契約が終わる仕組みを想定している。
解雇の金銭解決制度は政府が2015年に成長戦略に盛り込んだことで議論が始まった。導入に積極的な政府や経済界に対し、労働組合などは「リストラに悪用される」と反発しており、労政審の議論は難航が予想される。
報告書では、使用者に通告された解雇が合理的な理由を欠き無効と認定された労働者を制度の対象とした。金銭解決の申し立ては労働者に限定し、企業からの申し立ては再度の解雇を認めることになるなど現状では容易ではない課題があるとして議論の対象に含めなかった。
労働者に支払われる「労働契約解消金」の算定については給与額や勤務年数、年齢が考慮要件になると提示。予見可能性を高めるために金額に上限や下限を設けることを今後、議論するべきだとした。
訴訟の和解手続きや労働審判の調停など、解雇を不当としながらも職場復帰を望まない労働者が企業から金銭支払いを受けて労働契約を終わらせる仕組みは既にある。ただ、政府は「労働者の選択肢を増やす」として、新たな制度の導入を推進してきた。
17年5月に厚労省の別の有識者検討会が「一定程度の必要性が認められる」との報告書をまとめたが、その後、労政審分科会で労働側委員が「リストラの手段として使われることや解雇の選択肢を増やすことにつながる懸念がある」と導入に反対した。
厚労省はさらに法的な論点を整理するため、18年に法学者らによる検討会を設置、議論が続いていた。
(共同通信社)