2022年03月25日掲載

BOOK REVIEW - 『持続的成長をもたらす戦略人事 人的資本の構築とサステナビリティ経営の実現』

須田敏子、森田 充 著
青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授 
A5判/184ページ/2000円+税/経団連出版 


BOOK REVIEW 
人事パーソンへオススメの新刊

 「SDGs」や「サステナビリティ」といった言葉が身近なものとなった昨今、これらの言葉と"人事"業務とのつながりを考える実務担当者も少なくないと思われる。本書は、人事分野や国際比較、ファイナンスや資本市場の専門家が、長年のSHRM(Strategic Human Resource Management;戦略人事)研究の知見に基づき、資本市場から持続可能な社会の実現を目指す「ESG」などの概念が、人事分野に与える影響を考察したものである。

 各章を通じて、国内外の広範なデータや研究等を紹介しつつ、人事を取り巻く環境変化を解説する。第1~2章では雇用や賃金上昇率、人事部門の役割に関する国際比較を取り上げながら、日本型人事の特色について明らかにしていく。長期トレンドを俯瞰(ふかん)しつつ、近年注目が集まるジョブ型人事への転換にも触れられている。続く第3~4章は、経営の重要テーマとなりつつある「人的資本」について取り上げ、サステナビリティ重視の傾向がいっそう進んでいる世界的潮流や、ダイバーシティ&インクルージョンの推進について紹介する。

 第5~6章では、同一労働同一賃金や新型コロナウイルス感染拡大にも触れながら人事を取り巻く日本国内の環境変化を見た上で、「ジョブ型」「マーケット型」人事の実態について説明し、続く第7~8章においてサステナビリティ経営実現の方法である人的資本構築を探る一方で、「制度派組織論」に基づいた「サステナビリティ環境」の普及プロセスを分析する。戦略人事の"理論"を実務に落とし込むためのエッセンスを学びたい人へ、おすすめしたい一冊だ。

持続的成長をもたらす戦略人事
人的資本の構築とサステナビリティ経営の実現

内容紹介
◆人材のダイバーシティ(多様化)が進まない原因とは
◆賃金を上げる人事とは何か
◆人材の流動化が進むと、どのような変化が生じるのか

ESG、SDGsへの対応を進める企業が増え、サステナビリティ重視の経営環境が急速に進展している。そんな中、企業と社会の持続的成長を実現する人的資本の構築や、ダイバーシティ&インクルージョンの実現などは重要な対応項目とされ、これらの領域を主管する人事部門にとって喫緊の課題となっている。
賃上げ、ジョブ型への転換に対する関心も高まっている。賃金停滞の原因として、転職の少なさや解雇規制の強さなどを指摘する声はあるが、人材流動化が進むと具体的にどのような変化が起こるのかは、明確になっていない。
そこで本書では、英米のデータをもとに、日本の賃金停滞問題を解決する人事のあり方として、ジョブ型・マーケット型人事(賃金決定)の実態を紹介するとともに、SHRM(戦略人事)研究に基づき、社会と企業の持続的成長を実現する人的資本の構築に関して、具体的方策を提示する。