勤務していた青果卸売会社の取引先の氏名や電話番号といった連絡先データを、退職時に会社貸与のスマートフォンから自身のスマホに移行させて営業秘密を持ち出したとして、不正競争防止法違反(営業秘密領得)の罪に問われた奈良県の男性被告(52)に津地裁は23日「営業秘密に当たると認めることはできない」として無罪(求刑罰金50万円)を言い渡した。
柴田誠裁判長は判決理由で、顧客情報は「同業者なら特別な困難を伴うことなく容易に入手できるものが大半だ」とした上で、「日々の営業活動の中で個人的な信頼関係を構築し、蓄積してきたものと認められ、被告人自身の人脈と不可分の情報が多分に含まれていた」と指摘。会社が退職後の情報利用を一切許さないことは「職業選択の自由に対する過度の制約になりかねない」と判断した。
判決によると、三重県伊賀市の青果卸売会社で上席営業部長だった2017年1月、奈良県内の携帯電話販売店で、会社から貸与されて私用でも使っていたスマホの全ての電話帳データを自身のスマホに移行させ、同月末に退職した。
小松武士次席検事は「判決内容を精査し、上級庁とも協議の上、適切に対応したい」とのコメントを出した。
(共同通信社)