公開日 2022.03.22 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)
カスタマーハラスメント(かすたまーはらすめんと)
顧客などからのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの。
ここでいう「顧客等の要求の内容が妥当性を欠く場合」や「要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なもの」の例としては、次のものが挙げられる。
【「顧客等の要求の内容が妥当性を欠く場合」の例】
●企業の提供する商品・サービスに瑕疵・過失が認められない場合
●要求の内容が、企業の提供する商品・サービスの内容とは関係がない場合
【「要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当な言動」の例】
<要求内容の妥当性にかかわらず不相当とされる可能性が高いもの>
●身体的な攻撃(暴行、傷害)
●精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言)
●土下座の要求
●継続的(繰り返し)、執拗(しつこい)な言動
●拘束的な行動(不退去、居座り、監禁)
●性的な言動
●従業員個人への攻撃、要求 等
<要求内容の妥当性に照らして不相当とされる場合があるもの>
●商品効果の要求
●金銭補償の要求
●謝罪の要求(土下座を除く) 等
2020年1月に策定された「事業主が職場における優越的な関係を背景にした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令2.1.15 厚労告5)において、カスタマーハラスメントに関して、雇用管理上の配慮として事業主が行うことが望ましい取り組みの例として、次の点が挙げられた。
(1)相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
(2)被害者への配慮のための取り組み(メンタルヘルス不調への相談対応、行為者に対して一人で対応させないなど)
(3)被害防止のための取り組み(対応マニュアル作成や研修の実施など、業種・業態等における被害の実態や業務の特性等に応じた取り組み)
カスタマーハラスメントは、職場におけるパワーハラスメントと比べると、「顧客等に対しハラスメント行為防止の働き掛けを行うことが難しい」「顧客等による行為が社内でハラスメントと認定されても、会社と顧客等との間に雇用関係がないため、実効性のある措置を講じることが難しい」などの特徴がある。そのため、カスタマーハラスメントの防止には、弁護士との連携や所管官庁との連携が重要といわれている。
厚生労働省は、2022年2月に、「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を作成、Webサイト上で公開し、企業におけるカスタマーハラスメント対策の実施を促している。