トヨタ自動車グループの特殊鋼メーカー「愛知製鋼」のセンサー開発を巡る技術情報を漏らしたとして、不正競争防止法違反(営業秘密開示)の罪に問われた同社元専務本蔵義信被告(71)と元社員菊池永喜被告(68)に、名古屋地裁は18日、「情報は一般化されていて、営業秘密とは言えない」として無罪判決を言い渡した。
板津正道裁判長は判決理由で「情報は抽象化、一般化されすぎていて、ありふれた方法を選択して単に組み合わせたものにとどまる。営業秘密を開示したとは言えない」と述べた。
その上で「愛知製鋼は、一般情報ではないと明示して管理するなどの措置を講じていたわけでもない。起訴には無理がある」と結論付けた。求刑は本蔵被告が懲役3年、罰金200万円、菊池被告が懲役2年、罰金100万円だった。
2人は同社に在籍していた2013年4月、岐阜県各務原市の同社工場で、同社の独自技術をホワイトボードに示すなどし大阪市の企業に伝えたとして17年3月に起訴された。
17年6月の初公判で2人は無罪を主張。弁護側は「機械メーカーなら当然持っている技術。競争上優位な地位を占めるような価値もなかった」として営業秘密に当たらないと訴えていた。
情報は、愛知製鋼が世界で初めて開発に成功した磁気センサー「MIセンサ」を製作する装置に関するもの。MIセンサは小型で感度が高いのが特徴で、車の自動運転技術や医療分野での活用が期待されている。
愛知製鋼は「違法行為として判断されず、誠に残念。判決内容をしっかりと理解した上で、今後の対応を検討する」とのコメントを出した。
名古屋地検の金山陽一次席検事は「判決内容を精査し、適切に対応したい」としている。
(共同通信社)