公開日 2022.02.24 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)
給与ファクタリング(きゅうよふぁくたりんぐ)
個人の給与を債権とみなし、給与支給日前にその給与債権を金融業者などに買い取ってもらう仕組み。労働者は、給与支給日前に現金を手に入れることができるが、金融業者などに手数料を支払うことが必要になる。
労働基準法24条の規定により、使用者は直接労働者に対し賃金を支払わなければならないため、給与債権を買い取った金融業者などは、使用者(労働者の勤務先など)に対してその支払いを求めることはできず、労働者からそれを回収しなければならない。すなわち、給与ファクタリングは、譲渡人(金融業者など)から労働者へ金銭を交付するだけでなく、譲渡人による労働者からの資金の回収を含めた資金移転のシステムが構築されていることになり、これを業として行う者は「貸金業」に該当し、貸金業登録や上限金利を超えない金利設定するなど、貸金業法にのっとって営業しなければならない。
しかし、2020年頃から、貸金業登録を受けていない「ヤミ金融業者」が行う違法な給与ファクタリングにより、法定の上限利率を超える手数料を支払わされたり、大声でのどう喝や勤務先への連絡といった悪質な取り立てを受けたりするなどの被害に遭う労働者が発生している。
金融庁や警察などは、貸金業登録を受けていないヤミ金融業者を利用しないようにWebサイトなどを通じて労働者に注意を呼び掛けるとともに、被害者の電話相談窓口を設置するなどして、違法な給与ファクタリングから労働者を守る対策を講じている。