複数の従業員に違法な引き抜き工作をしたとして、デロイトトーマツコンサルティングが競業他社に移籍した元幹部に、計約1億2千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は16日、「社会的相当性を逸脱した背信的な引き抜き行為」とし、約5千万円の支払いを命じた。
判決によると、デロイト社の業務執行社員だった元幹部は2018年に退職した後、現在のEYストラテジー・アンド・コンサルティングに移籍。部下ら複数の従業員もその後EY社に移った。
元幹部側は「移籍の事実を告げただけで、勧誘していない」と主張したが、沢村智子裁判長は、部下らに移籍後の構想を説明し、EY社での勤務条件についても部下らの代わりに同社と交渉するなど、積極的な働き掛けがあったと指摘した。また、内部情報を外部に伝えて批判的な記事の掲載に協力するなどし「一連の行為はデロイト社の事業に悪影響を及ぼすために行われたもので、違法だ」と結論付けた。
判決はデロイト社の引き抜き禁止条項に基づき、損害額を算定。退職金の一部についても返金すべきだとした。
(共同通信社)