労働基準法、労働組合法、労働関係調整法のいわゆる「労働三法」の一つである労働基準法(労基法)は、賃金や労働条件など使用者が最低限守るべきものを定める「労働法」の柱です。ただし、柱といっても、「労働法=労基法」ではありません。
「労基法」だけが労働法ではない
産業社会の発展とともに制定当初と比べて労働者を保護すべき範囲が広がったことから、労基法の第5章にある「安全及び衛生」については、労働安全衛生法(安衛法)に譲ることとしています。
また、賃金に関しては「賃金の支払の確保等に関する法律」や「最低賃金法」などの法律で定めているように、さまざまな法令が、労働法の柱である労基法を支えています。
これら関連する法令も頭に入れて就業規則や規定の作成・整備を図らなければ、真の労働環境や職場環境をつくることはできないでしょう。
「労基法」のよみ方
労基法は下記のとおり14の章から成り立ち、さらにその細目を政令や省令、告示などで定めています。
たとえば、労働条件の明示事項について、労基法15条では「使用者は、労働契約の締結に際し、…賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない」とするのみで、詳しくは「厚生労働省令」に当たる労基法施行規則5条に示してあります。
法の理解のためには、判例や行政解釈(通達)も意識しつつ、ていねいに条文を追うことが大切です。
労基法の概要
●第1章 総則
労基法の目的やその適用範囲、用語の定義などについて
●第2章 労働契約
労働契約の締結や解除についての労働保護上必要な事項
●第3章 賃金
賃金の支払いに関する原則や休業手当などについて
●第4章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇
法定労働時間や休憩、休日、年次有給休暇に加え割増賃金の支払いなどについて
●第5章 安全及び衛生
労働者の安全と衛生について(詳細は、安衛法で定めている)
●第6章 年少者
18歳未満の年少者が働くに当たっての深夜業その他の保護規定などについて
●第6章の2 妊産婦等
妊産婦の労働時間の制限など女性が働くための保護規定などについて
●第7章 技能者の養成
技能習得者の保護などに関する規定について
●第8章 災害補償
療養補償や障害補償など、業務上の負傷・疾病に対する補償などについて
●第9章 就業規則
就業規則の作成、変更、届け出などについて
●第10章 寄宿舎
寄宿労働者に対する私生活の自由の保障や安全衛生などについて
●第11章 監督機関
監督機関の組織や権限などについて
●第12章 雑則
就業規則などの周知義務や労働者名簿・賃金台帳の作成保存などについて
●第13章 罰則
労基法に違反した場合の罰則規定や両罰規定などについて
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この解説は『初任者・職場管理者のための労働基準法の本 第4版』より抜粋しました。労務行政研究所:編 A5判 192頁 2,035円 |