2015年、陸上自衛隊西部方面隊の男性陸士長=当時(22)=が自殺したのは教官のパワハラが原因だとして、両親が教官2人と国に約8100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、熊本地裁(中辻雄一朗裁判長)は19日、パワハラが自殺につながったと認め、国に220万円の支払いを命じた。
判決などによると、男性は15年10月1日、当時長崎県佐世保市にあった第5陸曹教育隊に入った。同月7日朝、隊宿舎のトイレで自殺しているのが見つかった。
判決は、教官2人が男性の胸ぐらをつかんだり「殺してやりたい」と発言したりし、男性が強い精神的苦痛を受けたことが推認されると指摘。「違法な指導が一因となって適応障害を発症し、自殺に至った」とし、国は、教育隊に入った学生への安全配慮義務に違反していたと認定した。
職務上の行為で個人の責任は負わないとして、教官2人への請求は棄却。2人が自殺を予測することは困難だったとも言及した。
閉廷後、原告側弁護士は記者会見し「弱い立場の者を追い込めば死んでしまう。それを軽視した判決で、受け入れられない」とする両親のコメントを発表。控訴する考えを示した。西部方面隊は「判決内容を精査中だ」とした。
教官2人は17年、男性への暴行に関し停職の懲戒処分を受けた。男性の自殺は18年8月、公務員の労災に当たる公務災害と認定されている。
(共同通信社)