2022年04月26日掲載

人事パーソン要チェック! 新刊ホンネ書評 - [228]『LIFE SHIFT2―100年時代の行動戦略』

(アンドリュー・スコット リンダ・グラットン 著 池村千秋 訳
 東洋経済新報社 2021年10月)


 

 本書は、『LIFE SHIFT』(2016年/東洋新報社)の著者らによる、前著の"実践編"であるとのことです。前著では、これまでは「教育→仕事→引退」という人生だったのが、長寿化によって、これからは多くのステージへの移行を繰り返し、多様な経験とスキルなどを育んでいくマルチステージの時代になっていくと説いていました。

 本書は、全3部・1~8章の構成です。第1部「人間の問題」では、テクノロジーの進化と長寿化がどのような変化を生み出し、私たちはそれにどう向き合い、どのような要素を重んじるべきなのかを論じます。第2部「人間の発明」では、その要素を軸に、長寿の時代に適応するために一人ひとりが取るべき行動について述べ、第3部「人間の社会」では、企業や教育機関、政府の仕組みがどのような転換を遂げるべきかを指摘しています。

 第1部の第1章では、人工知能(AI)やロボットについて論じ、テクノロジーの進化と長寿化の進展は私たちの生活を改善し得るが、どうすれば長く働き続けられるか、どうすれば建設的な世代間関係を築けるかといった人間的問題は、最終的には人間だけが解決できるものであるとしています。

 第2章では、人生の在り方を再設計し、人間としての可能性を開花させる上で重んじるべき要素として、物語(自分のストーリーを歩む)、探索(学習と変身を実践する)、関係(深い絆をはぐくむ)の三つを挙げ、この3要素に注目することで有効な対処法を導き出せるとして、以下、第2部でそれを実践するための具体的方法を論じています。

 第2部の第3章「物語」では、社会の変化に伴い、自分の人生に意味を与えられる新しいストーリーを紡ぐ必要が出てくるが、それは、年齢や時間、仕事に対する自分の考え方を再検討し、長期化する職業人生や余暇時間の増加などを前提に、人生でさまざまな選択を行う際の手引きとなるようなストーリーでなければならないとしています。

 第4章「探索」では、幾つもの移行を繰り返しながら長い職業人生を送るためには学び続ける必要があるとして、移行を成功させる方法をどう学ぶか、新しいタイプの移行はどのようなものか、中年期の移行や高齢期の移行を成功させるにはどうすればよいかを説いています。

 第5章「関係」では、長寿化により家族の在り方も多様化し、同時期に幾つもの世代が共存するようになるが、そうした中で純粋な人間関係を構築するにはどうすればよいか、コミュニティとどう関わるべきかを説いています。

 第3部の第6章では、これからの企業の課題は、社員のマルチステージの生き方や、幸せで健康的な家庭生活を支援し、学習を促す環境を整備し、年齢差別をなくして高齢の働き手の生産性を維持することであるとしています。

 前著『LIFE SHIFT』を深堀りした本であり、長寿化の進展とテクノロジーの進化の中、個人と社会はどのように行動すればよいのかを説くとともに、そうした社会の変化に対して企業はどうあるべきかをも説いており、人事パーソンにもお薦めです。

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※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2021年12月にご紹介したものです。

【本欄 執筆者紹介】
 和田泰明 わだ やすあき

 和田人事企画事務所 人事・賃金コンサルタント、社会保険労務士

1981年 中堅広告代理店に入社(早稲田大学第一文学部卒)
1987年 同社人事部へ配転
1995年 同社人事部長
1999年 社会保険労務士試験合格、2000年 行政書士試験合格
2001年 広告代理店を退職、同社顧問(独立人事コンサルタントに)
2002年 日本マンパワー認定人事コンサルタント
2003年 社会保険労務士開業登録(13030300号)「和田人事企画事務所」
2004年 NPO生涯教育認定キャリア・コンサルタント
2006年 特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)合格

1994-1995年 日経連職務分析センター(現日本経団連人事賃金センター)「年俸制研究部会」委員
2006年- 中央職業能力開発協会「ビジネス・キャリア検定試験問題[人事・人材開発部門]」策定委員
2009年 早稲田大学オープン教育センター「企業法務概論」ゲストスピーカー