過労死ライン未満でも労災 新基準で判断覆り認定 脳内出血の居酒屋調理師


 居酒屋チェーンで勤務中に、脳内出血し後遺症がある元調理師の男性(62)について、労働基準監督署が「過労死ライン」に満たない残業時間で労災認定していたことが21日、分かった。労基署はいったん申請を退けたが、厚生労働省が9月、過労死ラインに達していなくても不規則勤務などを重視する新しい認定基準の運用を始めたことを受け、判断を覆した。厚労省によると、新基準に基づいて決定が取り消しになり、認定されたのは初めて。
 男性の代理人の松丸正弁護士によると、男性は2016年1月、千葉県柏市の「庄や」で勤務中に脳内出血し、救急搬送された。同3月に柏労基署に労災申請したが、残業時間が過労死ラインに達していないとして認められなかった。
 男性は労災が認められなかったのを不服として、19年、国に決定の取り消しを求め東京地裁に提訴。その後、柏労基署は新基準に基づいて改めて検討、今年12月に「長期間の過重業務による負荷が認められる」として認定した。柏労基署は男性側に「不規則な深夜勤務などの負荷を総合考慮した」と説明したという。
 厚労省は9月、過労死を含む脳・心臓疾患の労災認定基準を2001年以来、20年ぶりに改正。残業時間が発症前2~6カ月の平均で月80時間、直近1カ月間で100時間とされる「過労死ライン」に達しなくても、勤務が不規則など労働時間以外の負荷がある場合は認定しやすくした。
 基準改正前も認定に当たっては労働時間以外の負荷要因も評価するとしていたが、実際には労働時間が重んじられる傾向にあった。
(共同通信社)