公開日 2021.12.22 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)
選択制確定拠出年金(せんたくせいかくていきょしゅつねんきん)
企業型確定拠出年金の一種で、企業年金の掛金(月額)を、そのまま掛金として拠出するか、毎月の給与として受け取るかを各従業員が選択することができる制度。導入に当たっては、「年金掛金分として新たに給与に上乗せする部分について、掛金とするか、給与とするかを各従業員が選択するパターン」と「現行の給与の一部分について、年金掛金として拠出することを従業員が選択できるパターン」(このパターンを選択した場合、給与の手取り額は減る)などがある。前者のパターンは、従来の退職金制度を廃止・縮小して確定拠出年金に切り換えるときに、また後者のパターンは、人件費を増やさずに従業員の福利厚生を充実させたいと考える会社などに、主に使われている。
年金掛金として拠出することを選択した場合、掛金相当額は、所得税、住民税が課税対象および社会保険料の算定基礎から外されるため、従業員からすれば、給与として受け取る場合と比較して税金や社会保険料の負担が軽減されるというメリットがある(なお、事業主にとっても、社会保険料の事業主負担分が軽減されるというメリットがある)。また、年金資産の運用益も非課税扱いで再投資されるため、個人で一般の金融商品を運用するよりも有利な資産形成※を行えるというメリットもある。
※一般の金融商品では運用益に対して20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税金が差し引かれる。
一方、年金掛金として拠出した積立額は、原則として60歳まで引き出すことができず、従業員は自由に使うことができないというデメリットがある。また、給与として受け取るときと比較すると、社会保険料の負担が軽くなる分だけ、老齢厚生年金や健康保険の傷病手当金などの給付額が減少するというデメリットもある。
選択制確定拠出年金は、ここ10年ほどの間に、人件費増加を極力抑えつつ企業年金を充実させたいというニーズを持つ中小企業を中心に導入が進んだが、その後、税や社会保険料の負担軽減というメリットが着目されるようになり、大企業においても導入するところが出現し始めている。