東証1部上場の床材メーカー「東リ」(兵庫県伊丹市)の工場での就業実態が違法な「偽装請負」だったとして、請負会社から解雇された男性5人が地位確認などを求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は4日、請求を棄却した一審神戸地裁判決を取り消して偽装請負を認め、直接雇用契約の成立と最大月約27万円の賃金支払いを命じた。
請負契約では発注側が請負会社の社員に直接指揮命令する権限はない。2015年施行の改正労働者派遣法は、違法派遣があった場合には派遣先企業が労働者を直接雇用する意思を示したとみなすと規定している。原告側代理人によると、この規定に基づき、雇用契約の成立を認める司法判断は初めて。
清水響裁判長は判決で東リは請負会社の責任者を通して、具体的な作業手順を指示していたと認定。「請負としての実態がなく、脱法行為であったのは明らか」として、偽装請負を認めた。
その上で、労働者派遣法に基づき、東リは直接雇用契約の申し込みをしたとみなして解雇後の賃金の支払いを命じた。
判決後、大阪市内で会見した原告の一人の藤沢泰弘さん(58)は「非正規労働者が、直接雇用の権利を獲得できる礎になればいい」と話した。
東リは「判決文が届いていないため、回答を差し控える」としている。
判決によると、東リの伊丹工場で建材の製造作業などに従事していた男性5人は、17年3月に請負会社から解雇され、東リに直接雇用を求めていた。
(共同通信社)