令和3年度 治療と仕事の両立支援シンポジウム基調講演
厚生労働省主催のオンラインイベント「治療と仕事の両立支援シンポジウム」が今年度は「企業と医療機関、それぞれから支える両立支援」をテーマに開催されます。本記事では、根岸純子氏の基調講演「支援機関の立場からの両立支援の取組について」の一部をご紹介します。65歳以上で働いている人も年々増加するなど、高齢化が進んでいる中、病気を抱えながら働く労働者の支援の重要性が増しています。根岸氏の基調講演では、企業や労働者が治療と仕事の両立に関する支援を無料で受けることができる「産業保健総合支援センター」がどのような活動をしているのか、どのように利用できるのかについてわかりやすく説明されています。シンポジウムは、ポータルサイト「治療と仕事の両立支援ナビ」からご覧いただけます。
東京産業保健総合支援センターにおける両立支援の取組について
~支援機関の立場から~
根岸純子氏(東京産業保健総合支援センター メンタルヘルス対策促進員・両立支援促進員)
●産業保健総合支援センターは、企業も労働者も利用可能です
企業やそこで働く労働者などを支援するために、独立行政法人労働者健康安全機構が全国47都道府県に設置しているのが「産業保健総合支援センター」です。ここでは、東京産業保健総合支援センターにおける治療と仕事の両立支援事業(以下「両立支援事業」という。)を紹介します。
両立支援事業は企業と患者さんである労働者の方の両方が利用でき、企業規模にかかわらず対象となります。企業の人事労務担当者や産業保健スタッフ等の方から産業保健総合支援センターに相談・依頼いただくと、その内容に応じて産業保健相談員(産業医や保健師等)と両立支援促進員(社会保険労務士や公認心理師等)が企業への支援を行います。労災病院等にある出張相談窓口では、主に患者さんである労働者の方の依頼により、両立支援コーディネーターや医療ソーシャルワーカーが支援を行っています。
●両立支援事業の四つの取組
両立支援事業には、①両立支援の普及・促進等の広報活動、②治療と仕事の両立支援に関する相談への対応、③個別訪問支援、④個別調整支援の四つの取組があります。
①両立支援の普及・促進等の広報活動
広報活動では、「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」について企業等に普及・啓発を行っています。ガイドラインには企業が両立支援を行うための留意事項や環境整備・支援の進め方が記載されています。また、企業と主治医がやりとりを行う文書の様式例や、両立支援プランの様式も掲載されています。さらに、ガイドラインの参考資料として作成された「企業・医療機関連携マニュアル」では、企業と医療機関の連携が事例形式で具体的に示されておりますので、ぜひご活用ください。その他、治療と仕事の両立支援の取組の必要性について企業等に理解を深めてもらうため、企業等に対する啓発セミナーなどを行っています。
※ガイドラインとマニュアルは厚生労働省のホームページよりダウンロードすることができます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000115267.html
②治療と仕事の両立支援に関する相談への対応
相談への対応は、患者さんである労働者やその家族が就業継続について気軽に相談できる、あるいは患者さんである労働者から相談を受けた上司等が対応について相談できる窓口として設置し、次の二つを目的としています。一つは、患者さんである労働者や家族が病気や治療の不安から不本意に退職を選択してしまわないよう助言すること、もう一つは、患者さんである労働者の方から企業が相談を受けたとき、その対応をサポートすることです。いずれも、必要に応じて、以下の③個別訪問支援や④個別調整支援につなげることを目指します。
具体的には、産業保健総合支援センターの相談窓口において、産業保健相談員が電話やメール、面談等で事業者、人事労務担当者や産業保健スタッフの方などからの相談を受け付けるほか、労災病院等の出張相談窓口で患者さん(労働者)やその家族からの相談に対応しています。
③個別訪問支援
企業等の依頼に応じて両立支援促進員が訪問し、企業の現状やニーズ、要望方針等を把握した上で、その企業に合った両立支援制度の導入等を支援します。具体的には、休暇制度や勤務制度の見直し・整備、相談窓口の設置、両立支援に関する制度等の周知・意識啓発の研修、両立支援プログラムの策定など、企業における治療と仕事の両立支援の進め方について支援を受けることができます。
④個別調整支援
患者さんである労働者ご本人の同意がある場合、労働者と企業の間に入り、治療と仕事の両立に向けた調整を支援します。目的は、労働者の方ががん等の病気を理由に不本意に退職したり、就労で病気が悪化したり、仕事上の理由から定期的な通院が中断したりしないよう、適切な配慮を促すことです。
企業等からの申し出に応じて両立支援促進員が企業を訪問し、個別の労働者について就業上の措置や治療に対する配慮などを調整するほか、必要に応じて両立支援プランの作成も支援します。労災病院などの出張相談窓口でも、個別の患者さんの治療と仕事の両立について調整支援します。
●無料サポートの活用を!
治療と仕事の両立支援は、専門家が企業と労働者との両者に対して中立的な立場で行っています。個別訪問支援では、企業に合った具体的な支援を実施しています。これらの支援は厚生労働省の委託事業であり、すべて無料です。産業保健総合支援センターに相談したいという企業の方は、是非お近くのセンターを探してみてください。お気軽にご相談・ご利用いただければと思います。
治療と仕事の両立支援ナビ「相談機関一覧」
https://chiryoutoshigoto.mhlw.go.jp/consultation_list/
[基調講演 登壇者ご略歴]
根岸純子氏
東京産業保健総合支援センター メンタルヘルス対策促進員・両立支援促進員
根岸人事労務事務所 代表
特定社会保険労務士、公認心理師、シニア産業カウンセラー、キャリアコンサルタント。
大学卒業後、都内金融機関に勤務。平成10年社会保険労務士資格を取得し、社会保険労務士事務所勤務を経て、平成11年根岸人事労務事務所を設立、現在に至る。平成21年より労働者健康安全機構 東京産業保健総合支援センターにてメンタルヘルス対策促進員として企業のメンタルヘルス対策の支援に従事。平成16年より両立支援促進員に就任。
お知らせ
厚生労働省主催「治療と仕事の両立支援シンポジウム」が今年度も開催!
シンポジウムは、企業向けと医療機関向けに分けて、それぞれオンラインで開催いたします。事前申し込み不要で、どなたでも視聴いただけますので、詳細については、ポータルサイト「治療と仕事の両立支援ナビ」をご覧ください。
【開催日程】
●11月10日より事前配信
・基調講演、トークセッション
●ライブ配信 ※終了後はアーカイブ配信予定
・11月17日(水)13:30~15:00 企業向けシンポジウム
・11月29日(月)16:30~18:00 医療機関向けシンポジウム
【詳細はこちら】
ポータルサイト「治療と仕事の両立支援ナビ」