公開日 2021.9.28 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)
ISO30414(あいえすおー30414)
国際標準化機構(ISO)が2018年12月に策定した、人的資本の情報開示に関するガイドライン。欧米において投資家から企業に対して人材や組織に関する情報の開示要求が高まってくる中で、それら「人的資本」に関する情報の定量化や開示に関する国際的な指標として整備された。
ISO30414は、11の項目と58の指標で構成されており、大企業と中小企業に分けて、社内で議論するべき項目と対外的に開示するべき項目とを示している。なお、国や業界により人的資本の在り方などが異なるため、これらの指標の情報開示については、義務化されておらず、企業の自主的な判断に委ねられている。
[図表]ISO30414の項目と指標(抜粋)
資料出所:ISO「ISO 30414:2018 Human resource management - Guidelines for internal and external human capital reporting」
※上表は経済産業省「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」第2回資料での抜粋紹介を引用。
※11指標は表中の8指標のほか「Compliance and ethics」「Succession planning」「Workforce availability」の三つがある。
ISO30414に基づいて人的資本に関する情報開示を行うことは、次のメリットがあるものと考えられる。
(1)投資家にとっては、各社の人的資本の状況を把握することにより、投資先を適切に選定できる。一方、企業にとっては、投資家に自社の状況を知ってもらった上で、積極的な投資を促すことができる。
(2)労働者にとっては、各社が開示する人事方針や労働条件などを把握することにより、自分に合った企業に就職することができる。一方、企業にとっては、これらの情報を開示することにより、優秀な人材を採用すること、および、入社後のミスマッチを小さくして定着率を高めることができる。
(3)経営者は、自社の人的資本の状況を定量的に把握し、他社との比較などを行うことによって、問題点を改善し、企業の成長に結びつけることができる。
欧米では、金融機関を中心にISO30414に基づく情報開示が行われるようになってきているが、今後、日本においても、大企業を中心に同様の取り組みが進むものと考えられる。