労災保険特別加入制度

公開日 2021.9.28 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)

労災保険特別加入制度(ろうさいほけんとくべつかにゅうせいど)

 労働者災害補償保険(労災保険)の適用対象外とされている者(中小事業主、自営業者、海外派遣者など)のうち、業務の実態や災害の発生状況などからみて、労働者に準じた保護をすることが適当であると認められる者について、特別に労災保険の任意加入を認める制度(労災保険法33~37条)。次の者が特別加入の対象となる。

(1)中小事業主およびその家族従事者(第1種特別加入者)

[図表]に定める数の労働者を常時使用する事業主(事業主が法人その他の団体であるときは、その代表者)

②労働者以外で①の事業主の事業に従事する人(事業主の家族従事者や、中小事業主が法人その他の団体である場合の代表者以外の役員など)

[図表]中小事業主と認められる企業規模

業種

労働者数
金融業、保険業、不動産業、小売業 50人以下
卸売業、サービス業 100人以下
上記以外の業種 300人以下

(2)一人親方およびその他の自営業者(第2種特別加入者)
労働者を使用しないで次の①~⑨の事業を行うことを常態とする一人親方、その他の自営業者およびその事業に従事する者

①自動車を使用して行う旅客もしくは貨物の運送の事業または原動機付自転車もしくは自転車を使用して行う貨物の運送の事業※2(個人タクシー業者や個人貨物運送業者など)

②土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、原状回復、修理、変更、破壊もしくは解体またはその準備の事業(大工、左官、とび職人など)

③漁船による水産動植物の採捕の事業(⑦に掲げる事業を除く)

④林業の事業

⑤医薬品の配置販売の事業

⑥再生利用の目的となる廃棄物等の収集、運搬、選別、解体等の事業

⑦船員法1条に規定する船員が行う事業

⑧柔道整復師※1

⑨高年齢者雇用安定法律10条の2第2項で定める創業支援等措置に基づき事業を行う者※1

(3)特定作業従事者(第2種特別加入者)

①特定農作業従事者

②指定農業機械作業従事者

③国または地方公共団体が実施する訓練従事者

④労働組合等常勤役員

⑤介護作業従事者

⑥芸能関係作業従事者(芸能実演家、芸能制作作業従事者など)※1

⑦アニメーション制作作業従事者※1

⑧ITフリーランス(情報処理システム、ソフトウエア、webページの設計、開発、企画など)※2

(4)海外派遣者等(第3種特別加入者)

①日本国内で行われる事業(有期事業を除く)から派遣されて、海外支店、工場、現場、現地法人、海外の提携先企業など海外で行われる事業に従事する労働者

②日本国内で行われる事業(有期事業を除く)から派遣されて、海外にある中小規模の事業に従事する事業主およびその他労働者以外の者

③独立行政法人国際協力機構など開発途上地域に対する技術協力の実施の事業(有期事業を除く)を行う団体から派遣されて、開発途上地域で行われている事業に従事する者

※1:2021年4月1日から適用

※2:自転車を使用して行う貨物の運送の事業を行う者、ITフリーランスは、2021年9月1日から適用

 第2種特別加入者(上記の(2)と(3))の特別加入は、それぞれの対象者の相当数を構成員とする「特別加入団体」を通して行い、特別加入団体を事業主、特別加入者を労働者とみなして労災保険の適用を行う。
 これらの特別加入者は、一定の要件を満たす業務災害や通勤災害が発生したときに、通常の労働者と同じ保険給付が受けることができる。なお、保険給付の算定基礎となる給付基礎日額は、申請に基づき労働局長が決定し、年間保険料は、保険料算定基礎額(給付基礎日額×365)に事業ごとに定められた保険料率を乗じたものになる。