雇用保険料上げへ議論開始 コロナで財政逼迫、厚労省

 

 厚生労働省は8日、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の部会を開き、来年度の雇用保険料率の引き上げに向けた議論を始めた。新型コロナウイルス感染拡大で、休業手当を一部肩代わりする雇用調整助成金の給付決定額が昨春からの累計額で4兆3千億円を超え、雇用保険財政が逼迫しているため。

 今後のコロナ禍への対応や国費負担の在り方と併せ年内に結論を出し、来年の通常国会に雇用保険法改正案を提出する。

 雇用保険は失業など雇用対策目的で国が運営する保険制度で、保険料率は賃金に応じて決まる。本年度は特例として労働者負担が賃金の0・3%、企業負担が同0・6%となっている。部会では来年度から本来の労働者0・6%、企業0・95%に戻すことや、さらなる引き上げを検討する。

 2015年度には雇用保険の積立金が6兆4千億円に達し、コロナ禍前は政府が国費投入を大幅に減らしてきた経緯がある。この日の部会では「家計負担は増しており、今は保険料を上げるべきではない」(労働側委員)「コロナ禍は雇用保険で支えられる範疇を超えている。国の責任で一般会計から支出すべきだ」(経営側委員)と、労使から安易な引き上げをけん制する意見が出た。

 雇調金は企業が支払う雇用安定事業として運営。コロナ禍による助成率拡充や要件緩和措置により支給額が増え、積立金から1兆6千億円を借り入れ、一般会計からも1兆1千億円を投入している。だが財源はほぼ枯渇しており、厚労省は、当面は積立金を活用するなどして乗り切る考えだ。

(共同通信社)