障害配慮、施行へ議論開始 24年、企業に義務付け 慎重対応求める声も

 

 政府は、障害者の生活上の障壁を取り除く「合理的配慮」を企業などの民間事業者に義務付ける法律の2024年までの施行に向けた議論を始めた。24日に始まる東京パラリンピックを機に「共生社会」実現の機運は高まり、障害者団体は早期施行を求める。一方で、新型コロナウイルス禍で経営に苦しむ事業者からは、費用などの負担が大きいとして慎重な議論を望む声が上がっている。

 合理的配慮は、車いす利用者のため段差にスロープを置いたり、聴覚障害者と意思疎通するために筆談をしたりすること。事業者の負担が重すぎない範囲で行う。これまで国や自治体の義務だったが、事業者にも義務付ける改正障害者差別解消法が5月に成立した。24年6月4日までに施行される。

 6月の内閣府有識者委員会では、どのような場合に配慮が必要かを例示する基本方針を政府がまず改定し、それに基づき事業者が体制を整備するとのスケジュールが示された。事業者と障害者の双方に対応する相談窓口も設ける方向だ。

 障害者団体の委員からは「施行の前倒しが必要」との声が相次いだ。一方、バリアフリー対応で設備の改修や職員の研修が必要になり得る経済界の委員は「業種ごとに直面する課題はさまざま」「飲食業は新型コロナ禍で事業の存続に精いっぱいだ」と強調し、丁寧な議論が必要と訴えた。

 内閣府はこれらの意見を踏まえ、関連団体のヒアリングや合理的配慮の事例を集め、秋から議論を本格化させる考えだ。

(共同通信社)