「賃金変わらず」8割 無期転換後の労働者 厚労省が実態調査

 

 同じ職場で通算5年を超え有期雇用で働いた人が対象の「無期転換ルール」が適用された人の約8割が、賃金などの労働条件に変化がなかったことが28日、厚生労働省が事業所と労働者に実施した実態調査で分かった。ルールは転換後の待遇向上を企業に求めていないが、転換前に低賃金だった人は多い。長く安心して働けるよう、企業側に改善の取り組みが求められそうだ。

 厚労省は2020年7月に事業所、今年1~2月に労働者を対象とした調査を実施。約5700の事業所と約6700人の労働者から有効回答を得た。

 無期転換ルールは非正規労働者の雇用安定を目的に、13年施行の改正労働契約法に盛り込まれた。通算5年を超えて契約更新した有期労働者は、期間の定めのない雇用に転換できる。18年度から運用が始まった。

 調査結果によると、18、19年度に無期転換を勤務先に申し込む権利を得た人で実際に行使した割合は27・8%。転換後も賃金などの労働条件に変化がなかった人は78・7%に上り、正社員になった人は9・2%にとどまった。

 ルールの適用を逃れようと企業が5年以内に雇い止めする事例が相次いでいるが、調査では、有期労働者の勤続年数上限を設定していない事業所が82・9%となった。一方、設定している14・2%の事業所のうちほとんどが上限は5年以内までと答えた。

 有期労働者で、無期転換を「希望する」と答えた人は18・9%。「希望しない」は22・6%、「分からない」は53・6%だった。

 希望する理由については「雇用不安がなくなる」が最多。実際に転換した人に意識の変化を聞くと、「より長く働き続けたい」との回答が目立った。希望しない理由は「高齢だから、定年後の再雇用者だから」との答えが最も多かった。

 厚労省は今後、調査を基にルール見直しを検討する。担当者は「転換によって賃金改善やキャリアアップを求める人は多い。ルールの周知も必要だ」としている。

(共同通信社)