過労死の労災認定柔軟に 不規則勤務、負荷重視 厚労省、基準見直しへ

 

 過労死を含む脳・心臓疾患の労災認定基準の見直しを検討していた厚生労働省の専門家検討会は7日、残業が発症前2~6カ月間で平均月80時間などとする「過労死ライン」に達しなくても、不規則な勤務など、労働時間以外の負荷がある場合は認定できるとの提言をまとめた。過労死ラインは維持する。厚労省は検討会の意見を踏まえ、今秋にも20年ぶりに基準を見直す。

 2001年に改正された現行基準でも、認定に当たっては労働時間以外の負荷要因も評価するとしているが、実際には労働時間が重んじられる傾向があり、ここ数年、残業時間が過労死ライン未満のケースは1割程度にとどまる。基準見直しにより、認定の幅が広がると期待される。

 検討会がこの日、取りまとめた報告書では、近年の医学的知見を基に残業以外の要因を整理。負荷が重い不規則勤務として、拘束時間の長い勤務、休日がない連続勤務、終業と次の始業までの「勤務間インターバル」が短い勤務などを挙げた。

 過労死ラインには達しないが近い働き方の場合、労働時間以外の負荷があれば業務と発症との関連性が強く労災認定できるとし、過去に支給決定された実例も示した。

 また、認定対象となる疾病に「重篤な心不全」を追加。これまでは対象疾病の「心停止」に含めて取り扱っていた。

 残業の認定基準を月65時間に引き下げるよう求めてきた過労死弁護団全国連絡会議の川人博弁護士は「国際的に月65時間超で長時間労働とされる中、日本だけ高いハードルを維持するのは残念」。

 過労死ラインを下回っても認定できると報告書に明記されたことを受け「現場の担当者は基準見直しの趣旨を踏まえ、実態に即した審査をするべきだ」と訴えた。

(共同通信社)