夫婦別姓を認めない民法と戸籍法の規定が憲法に反するかどうかが争われた家事審判の決定で、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は23日、「合憲」との判断を示した。2015年12月の判決に続き2度目。裁判官15人のうち11人が賛成し、4人は「違憲」とした。最高裁は、夫婦の姓を巡る制度の在り方は「裁判での憲法違反の審査とは次元が異なる。国会で議論、判断されるべきだ」として、立法府の取り組みを促した。
夫婦に同姓を義務付ける規定は明治時代にでき、戦後も引き継がれてきた。家族の形や価値観が変わっていく中、社会情勢の変化をどう捉えるかが焦点だった。
最高裁は決定理由で「働く女性が増え、選択的夫婦別姓制度の導入に賛成する人の割合が増加するなど、社会の変化や国民の意識の変化を踏まえても、15年の判断を変更すべきだとは認められない」と指摘した。
合憲とした裁判官のうち3人は補足意見で「事情の変化によっては違憲と評価されることもあり得る」と含みを持たせた。
一方、違憲とした検察官出身の三浦守裁判官は「夫婦同姓の仕組みは、明らかに女性に不利益を与えている。別姓の選択肢を設けていないのは婚姻の自由を制約する」とした。弁護士出身の草野耕一裁判官も「選択的制度を導入しないことは個人の尊厳をないがしろにする」と述べた。
女性裁判官2人は違憲と合憲に分かれた。
15年の大法廷判決は、夫婦同姓の仕組みが社会に定着していると認定した。実際には妻が改姓する場合が圧倒的に多く、不利益があると認めたが「旧姓の通称使用によって一定程度緩和できる」とした。当時は裁判官5人が「違憲」だった。
法制審議会は1996年、選択的夫婦別姓制度の導入を含む民法改正を答申したが、自民党の反対で国会に法案は提出されていない。
今回の家事審判を起こしたのは東京都内の事実婚の夫婦3組。別姓での法律婚を希望したが、婚姻届が受理されず、受理を求めて18年に家事審判を申し立てた。家裁、高裁が退け、最高裁も特別抗告を棄却した。
(共同通信社)