厚生労働相の諮問機関である中央最低賃金審議会が22日開かれ、2021年度の地域別最低賃金を巡る労使間の議論が始まった。新型コロナウイルスの影響が続く中、大幅な引き上げを求める労働者側に対し、使用者側は雇用維持の側面を考えるべきだと反論、意見の隔たりが浮き彫りになった。菅政権が千円への早期引き上げに積極姿勢を示しており、その幅に注目が集まる。今後、双方が具体額を示して7月中旬の答申を目指す。
厚労省によると、労働者側の委員からは、困窮を訴える相談が増えており、セーフティーネットの一環として引き上げが求められるとの主張があった。使用者側の委員からは、厳しい経営状況でも雇用維持に努力している現状を適切に評価してほしいとの声が出た。
審議会後に開かれた小委員会の藤村博之会長(法政大教授)は労使双方に、次回7月1日の会合で目安額についての基本的な考え方を示すよう要請。7月中に少なくとも計3回の小委員会を開き、中央審議会が同月中旬にも取りまとめる見通し。
例年より答申の想定時期が前倒しされており、7月23日に東京五輪の開会式を控えているのを意識したとみられる。その後、都道府県の地方審議会が議論して8月ごろに結論をまとめ、10月ごろに改定される。
現行の最低賃金は全国加重平均で時給902円。最も高いのは東京の1013円で、秋田や鳥取、大分など7県の792円とは221円の差がある。
政府は今年の経済財政運営の指針「骨太方針」で、千円への早期実現を目指すと明記。西村康稔経済再生担当相は22日の記者会見で「最低賃金を含む賃上げの流れを継続していくことが極めて重要だ」と強調した。
(共同通信社)