労災基準20年ぶり見直しへ 不規則勤務を重視 過労死ライン変更せず


 厚生労働省の専門家検討会は22日、仕事が原因で脳梗塞や、くも膜下出血などの脳・心臓疾患にかかった場合の労災認定基準の見直しに向けた報告書案を示した。残業が発症前1カ月で100時間などとする「過労死ライン」は変更しないが、過労死ラインに近い働き方の人について、不規則な勤務などを判断材料として重視するべきだとした。検討会は来月にも提言をまとめる方針で、厚労省は20年ぶりに基準を見直すことになる。
 脳・心臓疾患の労災認定を巡っては、2001年に定められた現行基準では不規則勤務といった長時間労働以外の要素も評価するとしているが、残業が過労死ラインを超えないケースの認定数は少ない。IT化の進展などで働き方が多様化する中、基準を明確化する。認定の幅が広がり労働者保護につながることが期待される。
 報告書案では、長時間労働以外に労働者の負荷となる不規則勤務について▽拘束時間の長い業務▽休日のない連続勤務▽就業から次の始業までに一定の休息時間を設ける「勤務間インターバル」が11時間未満▽深夜、交代制勤務-などを例示。
 残業が発症前1カ月で100時間、2~6カ月で平均80時間の過労死ラインに近い場合には、こうした不規則勤務についても発症との関連性を評価するべきだとした。
 現行の認定基準では、過労死ラインを満たさない場合も不規則勤務や拘束時間の長い勤務などの負荷を「総合的に評価する」とされている。ただ19年度、過労死ラインを超えない場合の労災認定は23件(うち死亡6人)で、認定件数全体の1割程度にとどまっている。
 過労死遺族や弁護士らは、世界保健機関(WHO)と国際労働機関(ILO)が今年、残業が月65時間に及ぶと脳・心臓疾患のリスクが高まるとの調査結果を出したとして、過労死ラインの引き下げを求めているが、報告書案では現行基準を妥当とした。
(共同通信社)