戸籍上は男性だが、性同一性障害で女性として働く経済産業省の50代職員が、職場の女性用トイレの自由な使用など処遇改善を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は27日、使用制限を違法とした一審東京地裁判決を変更し、職員の逆転敗訴とした。職員側は最高裁に上告するとしている。
北沢純一裁判長は一審に続き、性自認に基づいた性別で生活するのは法律上保護された利益としたが、経産省は、他の職員の性的羞恥心や性的不安なども考慮して適切な職場環境を構築する責任を負うと指摘。「使用制限はその責任を果たすための判断であり、裁量を超えるとは言えない」と述べた。
判決によると、職員は入省後、専門医から性同一性障害と診断された。健康上の理由で性別適合手術は受けていない。2010年に同僚への説明会を経て女性の身なりで勤務を開始したが、経産省は「抵抗を感じる同僚がいる」として、本人が勤務するフロアと、上下1階ずつの女性用トイレの使用を認めなかった。
判決は、使用制限について、規範や先例がない中で経産省が検討・調整を経て決め、職員も納得して受け入れたとし「現時点で、制限撤廃を相当とする客観的な変化は認められない」と判断。制限を違法として、国に132万円の支払いを命じた19年12月の一審判決を見直した。
一方、上司が面談で「もう男に戻ってはどうか」と発言した点は一審同様に違法とし、国に11万円の支払いを命じた。
職員は判決後に都内で記者会見し「結論ありき。今更こういう判断を裁判所が出すのかと驚いた」と話した。経産省は「判決の内容を十分に精査し、関係省庁と協議をして適切に対応したい」とのコメントを出した。
(共同通信社)