労災不支給決定を取り消し 事故2年後に精神障害発症


 愛知県一宮市の自動車内装部品工場で事故に巻き込まれ、約2年後に精神障害を発症した元従業員の男性(55)が、労災保険の休業補償や療養補償を不支給とした国の処分の取り消しを求めた訴訟の控訴審で、名古屋高裁は28日、請求を棄却した名古屋地裁判決を変更、事故と発症の因果関係を認め、処分の一部を取り消した。
 労災の認定基準では、事故から6カ月以内の発症を対象とすべきとしており、代理人弁護士は「事故から半年以上たった後の精神障害と事故の因果関係を認めた点は画期的だ」と評価した。
 判決などによると、男性は2012年10月、業務中に機械に顔を挟まれ、左目をほぼ失明。14年10月ごろには適応障害も発症した。男性は精神障害について労災を申請したが、一宮労働基準監督署は休業補償と療養補償のいずれも不支給とし、地裁はこの決定を不服とした男性の訴えを退けた。
 高裁の始関正光裁判長は、事故後に痛みが続いたり視力が低下したりした点に触れ、事故後の状況も適応障害発症につながったと結論付けた。
 一方、休業補償の支給を通院日のみに限定した決定については、医師が片目でも就労できたと診断したことから、請求を棄却した地裁判決を支持した。
(共同通信社)