2017年10月、東京電力福島第1原発構内で倒れた後に死亡した福島県いわき市の自動車整備士猪狩忠昭さん=当時(57)=の遺族が長時間労働を放置したなどとして、元勤務先や東電などに計約4300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、福島地裁いわき支部は30日、元勤務先側に約2480万円の支払いを命じた。東電への請求は棄却した。
遺族は東電の救急医療態勢が不十分だったと主張していたが、名島亨卓裁判長は「厚生労働省が制定したガイドラインの水準を満たしていた」と判断。東電が記者会見で死亡と作業との因果関係を否定したことで受けた精神的苦痛についても「東電は当時の見解を述べているにすぎない。遺族が不快になったとしても社会通念上の限度を超えない」と退けた。
いわき労働基準監督署は18年10月、長時間労働による過労死だったとして労災認定。名島裁判長は「一家の支柱が過重労働によって死に至った」として、慰謝料を認定した。
(共同通信社)