企業の保険料猶予9千億円 コロナ影響で経営難 健保解散や倒産の恐れも


 新型コロナウイルス感染症の影響で業績が悪化した企業の社会保険料負担を巡り、特例を利用して年金や医療などの保険料納付を猶予された総額は、今年1月時点で少なくとも9千億円に上ることが25日分かった。コロナ収束が見通せない中、厳しい経営が続く企業の現状が年金や医療保険財政にも表れた形だ。健保組合の解散や、保険料負担が原因で企業が倒産する可能性もある。
 医療や年金などの社会保険料は、個人に加え企業にも支払い義務がある。政府は2020年2月納付分から、通常の猶予制度で求められる延滞金や担保を不要として1年間猶予する特例を設けた。新型コロナの影響で収入が20%以上減った企業が対象だ。この特例は、21年1月納付分までで終了した。
 厚生労働省によると、1月末時点で厚生年金保険料を約6300億円、大企業の従業員らが入る健康保険組合の健康保険料と介護保険料を約430億円、中小企業向けの協会けんぽで健康、介護保険料を約2300億円猶予した。合計で約9千億円となる。
 猶予された保険料は、いずれ支払う必要がある。大企業の健保では、収支改善のため保険料率の引き上げや、解散に踏み切る可能性もある。
 健保関係者は「コロナの影響は今後も続くだろう。当面は健保の積立金を取り崩すとしても、21年度末には解散を考える組合も出てくるのではないか」と話している。
 一方、自営業の人などが個人で加入する国民健康保険と75歳以上が加入する後期高齢者医療制度は、保険料を減額、免除する特例を設けている。20年4月~21年1月分で加入者の保険料計約700億円を減免した。
(共同通信社)