厚生労働省の労働政策審議会分科会が28日開かれ、電子情報でやりとりするお金「デジタルマネー」を使った賃金の支払いに関して議論した。支払い解禁を目指す政府は、銀行以外で送金業務のできる資金移動業者が開設したスマートフォンの決済アプリによる入金を想定しているが、分科会の委員からは、セキュリティーに対する不安の声が上がった。
分科会では厚労省の担当者が、昨年9月に発覚した電子マネー決済サービス「ドコモ口座」を悪用した不正引き出し事件を紹介、金融庁の対応も説明した。委員からは「資金移動業者を利用した際に考えられるお金の流れのリスクを示してほしい」「銀行と同等の補償や安全の仕組みが必要だ」などの意見が出た。
政府はデジタルマネーによる賃金支払い解禁を成長戦略の一環として掲げ、厚労省が検討を進めている。キャッシュレス決済を利用する人や、銀行口座開設が難しいケースの多い外国人労働者の需要が見込まれる一方、業者が破綻した場合に賃金が保全されるかどうかや、振り込まれた金の現金化が課題。
労働基準法によると、賃金は通貨で払うのが原則。支払い方法として現金のほか、労働者の同意があれば銀行振り込みなども認められている。デジタルマネーによる支払いを実現するためには、省令改正が必要となる。
(共同通信社)