公開日 2021.1.20 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)
エンプロイー・エクスペリエンス(えんぷろいー・えくすぺりえんす)
従業員が就労を通じて体験するさまざまな経験価値を意味し、モチベーションの向上、エンゲージメントの醸成および能力開発などに大きな影響を及ぼすものと考えられている。
急成長を遂げている欧米のIT企業やサービス業を営む企業では、挑戦的な仕事をする機会を与えたり、カフェのようなオフィス空間を提供したりすることによって、エンプロイー・エクスペリエンスを各従業員が蓄積し、また組織内で共有しており、それが優秀人材の確保や開発力の向上などに寄与している。日本においては、2015年頃から、これらの事例が紹介され、人事関係者の注目を集めるようになった。
マーケティングの分野では、顧客が重要視する価値が「商品」「サービス」から「経験」へと移行していくという理論があり、エンプロイー・エクスペリエンスは、それを人事管理に応用したものといわれている。また、人事管理の分野でも、「職務経験を積ませることが能力開発に効果があること」や「刺激的な仕事、働きやすい環境などの非金銭的報酬の付与がモチベーション向上の要因であること」は従来から指摘されており、エンプロイー・エクスペリエンスは、それらの考え方をまとめたものとも捉えられる。
今後、日本企業の中にも、「エンプロイー・エクスペリエンス」をキーワードにして、職務の付与や研修体系の見直しを行ったり、職場環境や組織風土の改善などに取り組んだりする動きが広がるものと考えられる。