解雇無効時における金銭救済制度

公開日 2020.12.22 深瀬勝範(Fフロンティア 代表取締役・社会保険労務士)

解雇無効時における金銭救済制度(かいこむこうじにおけるきんせんきゅうさいせいど)

 裁判によって解雇が無効との判決が出た後、職場復帰せずに退職する労働者と事業主との間でトラブルが発生しそうな場合に、事業主が金銭を支払うことによって、問題の解決を図ろうとする仕組み。金銭的および時間的予見性を高めることによって、解雇を巡る個別労働関係紛争の未然防止や迅速な解決を図ることを狙いとしている。
 「日本再興戦略」改訂2015(2015年6月30日閣議決定)において、この制度の具体化に向けた議論の場を立ち上げることが盛り込まれ、それを受けて、厚生労働省の「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」(2015年10月29日~2017年5月29日。以下、旧検討会)および「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的な論点に関する検討会」(2018年6月12日~)において、その在り方や必要性について検討が進められている。
 なお、ここで検討されている制度は、例えば、裁判等において解雇が無効とされた際に、労働者が職場に戻りたくないというときなどの「事後型」に限定されており、労働者に一定の金銭を支払うことにより正当な解雇とみなす「事前型」の解雇の金銭解決は含まれていない。また、金銭救済を申し立てる主体としては、「労働者」と「使用者」の2通りが考えられるが、このうち使用者の申し立てについては、不当な解雇や退職勧奨など使用者のモラルハザードを招くことなどが懸念されるため、現状では導入は困難であるものと、旧検討会は報告している。
 今後、この制度は、検討会からの報告を受けた労働政策審議会で審議および厚生労働大臣への答申などを経て、法制化に向けた動きが進められるものと考えられる。